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 1レース、向正面の直線を使うアベイユドロンシャン賞が始まると、時間の経過はあっという間。2R、3Rと2歳GIのレース実況を行っていたら、もう放送開始30分前。4Rオペラ賞の発走と同時に、中継はスタート。後はお聴きいただいた通りである。
 
 
凱旋門賞について、少しだけ触れておきたい。僕は基本、日本馬の遠征で海外中継に行く時、結果に関しては、あまり多くを期待しないようにしている。もちろん、勝ってくれるのが一番だし、心から応援している。だが、だ。期待し過ぎて戦前に舞い上がり、我を見失うことほど、愚かで、恐ろしいことは無い。あくまで、僕の遠征は、仕事なのだから。これは日本の仕事も同じであり、色々準備はするが、自分勝手な思い込みは、一切排除して仕事に臨むようにしている。だが、だ。今回ばかりは、そろそろ"機は熟したのかな?"そんなことを感じていたのだが......。
 
「やれることはやった」と語り、敗戦の中にも前向きな明るさのあるキズナ陣営に対し、「勝ち馬に脱帽するしかありません。でもまたすぐにでも、勝つまで挑戦を続けます」と語りながら、オルフェーブル池江師の声、表情は、落胆の色を隠せないものだったように思う。

 5戦目、それも無敗で圧勝したトレヴが、歴史的な快挙を成し遂げた、強すぎただけだが、やはり凱旋門賞の壁は厚く、そして高い。06年、ディープが敗戦した時、「生きているうちに、日本馬の凱旋門賞制覇の瞬間を、果たして見られるのだろうか?」と心底思った。あれから7年、チャンスは大きいと思ってフランス入りした今回だが、全然そんなことは無かった。「こういう馬(歴史的な名馬)が出てくるのが、このレースですから」落ち着いて語る、武騎手の言葉が、胸に響く。

 凱旋門賞は5R、その1時間25分後、7Rには、オルフェの帯同馬を務めたブラーニーストーンがフォレ賞(G1)に出走。その実況録音、そして取材を最後の仕事に。鞍上・藤岡佑介騎手には、3月頭、フランス遠征決定が報じられた直後に、実はインタビューさせてもらっていた。その事もあり、今回は是非彼に会って、インタビューをしたいと考えていた。それが実現し、ロンシャンでがっちり握手。これは嬉しかった。インタビューの模様は、明日の20時30分、「鈴木淑子の地球は競馬で回ってる」でオンエアー、どうぞお楽しみに。

なお、そのフォレ賞を勝ったムーンライトクラウドという馬、これが恐ろしいほど強かった。実績的には、タイキシャトルが勝ったジャックルマロワ賞を勝ち、そしてシーキングザパールが勝ったモーリスドギース賞を何と3連覇と、これだけでもその凄さはおわかりいただけると思うが、さらにムーランドロンシャン賞までも勝っている、この路線の欧州最強馬。最後方追走、大丈夫?と思わせながらも、直線あと200m少々だけで、一気の末脚爆発で圧勝、これでGI6勝目。トレヴ同様、衝撃的な強さだった。ひかわアナなら間違いなく「すぅんごい脚!!」と実況しただろう(笑)。来月のマイルCSに、是非来てくれないだろうか?

 全てが終わった後、藤田アナ、蜂谷さん、技術スタッフと4人、凱旋門近くの中華料理屋で今回の遠征の打ち上げ。美味しい料理に舌鼓、お二人の大先輩、特に初めてご一緒させていただいた蜂谷さんの話を色々伺いながらの楽しい食事だった。今回の遠征は、大先輩から学ぶことだらけ。放送をお聴きいただいた皆様にも、中継から、色々と感じていただけたのではないだろうか。僕なんて、まだまだちっぽけな存在である。もっともっと、技術を磨き、多くの人とかかわり、上に行かなければならない、そう痛感した。

ライトアップされた凱旋門は、美しく、素晴らしかった。思わず「おお!」と声をあげてしまった。そういえば今回の旅、全く観光スポットを訪れていなかった。エッフェル塔にしたって、ロンシャンの放送席から、そしてホテル近辺から遠目に眺めただけである。でも、僕はこれで十分。その他に、本当に多くのことを経験し、学ばせてもらったから。

 翌朝、9時35分にホテルを出て、バスで北駅へ行き、RER(B線)に乗って空港へ。RER(B線)は、非常に治安が悪く、あまり利用しない方がいいと書いてあるガイドもあるが、これまで沢山RERを利用した経験から、そんなことは無いだろうと思い、このルートで帰ってみた。実際、日中だし、そんなことはまるでない。空いていて、時間も読めて便利極まりない。全てに言えることだと思うが、早朝や深夜の、暗い、人通りの少ない時間を避ければ、何も問題無いのだろう。

 予定外は、空港の混雑。広すぎるシャルルドゴール空港ゆえ、移動にも時間がかかるのだが、それ以上に厄介なのが、自動チェックイン機。便利なのかなんなのか?慣れない人が、その操作に一苦労。行列がいくつもできていて、なかなか進めない(パパッとできれば、30秒で終わる簡単な手続きなのだが)。余裕を持って、2時間20分前に空港に着いているのに、搭乗エリアに着いた頃には、出発直前である。ここはもう少し、早めに来るべきだったと反省。慌てて残りのユーロ全額でお土産(チョコ)を買い込み、カードで缶ビールを買って飛行機に搭乗。13時30分、機上の人となり、翌朝8時、成田到着。冒頭の話に戻るが、その暑さに驚いたという訳。

 最後まで、拙いレポートにお付き合いいただき、ありがとうございます。久々の海外出張、本当に楽しかったです。また今回も、素晴らしい経験をさせてもらいました。次の現場は、来週の京都・菊花賞。日本の競馬モードに頭を切り替え、また頑張っていきたいと思います。

ラジオNIKKEI 中野雷太

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