小林雅巳アナ「『前略 広瀬伸一様』〜出来の悪い後輩より」 [実況アナ!]
2007/10/05(金) 17:28


 広瀬伸一アナウンサーが先月の26日に亡くなりました。私の4年先輩のアナウンサーでした。私は会社に入るまで全く競馬の知識がなく、入社して競馬の仕事を一番教えてくれた人が広瀬さんでした。「時計が速いって、どういうことですか?」など初歩的な質問にも答えてもらいました(すぐ上の某アナには『コバヤシくん、そんなグリグリの二重丸の馬ばっかり買ってもダメだよ。最終レースは見習い騎手が乗る馬を狙わなきゃ』などという馬券指南をしてもらいました)。

 初めて東京競馬場に行って放送席(もちろん昔のスタンドです)からの景色を見ていると、「あれがユーミンの歌に出てくる中央高速だよ」と指を差して言ってくれたことを何故か覚えています(奥様がユーミンのファンだったようで広瀬さんも『中央フリーウェイ』を知っていたんですね)。

 思えば広瀬さんにはよく怒られました。レース実況で馬の名前がスラスラ言えなくて「えー、2番手は……」と言ったら、「おまえ、その歳でジジ臭い実況してるんじゃない!」。直線で「懸命に」というフレーズを繰り返すと、「懸命にってのは『命を懸ける』と書くんだよ。そんなに懸命って言ってたら、命がいくつあっても足りないよ。そもそも馬はみんな一生『懸命』に走るんだよ!」。今年の春に言われたのは、「『一着、ゴールイン!』とよく言っているけど、最初にゴールインして初めて一着になるのであって、言うなら『先頭でゴールイン』じゃないの?」でした。今でも「一着、……」と言ってしまう時があり、そのたびに広瀬さんの言葉が頭に浮かびます。

 また、間抜けな後輩はよく迷惑もかけました。実況をやり始めた頃、あれは広瀬さんと二人で行った春の新潟開催でした。日曜のレース(アラブ系のレースでした)で、私が先頭の馬を前日の土曜に走った馬の馬名でもってゴール前まで実況してしまったのですが、広瀬さんはあっちこっち一緒になって謝りまわってくれたものでした。

 先月17日に札幌のレース(サロマ湖特別・4着)ではスリースピニングが走っていました。スリースピニング、忘れられない名前です。3年前の暮れの中京のレースで私がスリースピニングを『スピニングワールド』(お父さんの名前です)と言ってゴール寸前まで実況していた時も一緒にいたのが広瀬さんでした。落ち込んでいる私に「俺も悪かった。もっと早く気がついて指摘してやればよかったのに、すまなかったね」と言ってくれましたね。

 今は天国で大川慶次郎さんと競馬談義をされているのでしょうか。大川さんが見られなかったディープインパクトやウオッカのレースについて話はされましたか?

 出来の悪い後輩として、そして『広瀬アナウンサーならではのレース実況』のファンの一人として、ご冥福をお祈りします。